ソワレを待ちわびて

金曜日の夜、いつもより少しだけドレスアップして舞台を観に行く何とも言えないワクワクが大好きです。時々トニー賞作品を観劇にブロードウェイに行くので、現地のレポートもします。ミュージカル、歌舞伎、舞台を中心につれづれと。

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COME FROM AWAYを見てきました!それも9月12日に(笑)
COMEFROMAWAY

2017年トニー賞作品賞の有力候補の一つだったこの作品。
Dear Evan HansenとGroundhog Day、そしてこのCome From Awayの3つは絶対観るって決めてました。

ちょっと話は逸れますが、2017年のトニー賞は本当に面白かったですね。
昨年2016年は発表前から「ハミルトン/Hamilton」一強でしょ、って空気がムンムンでしたが、今年は発表まで分からない、それだけ豊作だった。という嬉しい悲鳴です。

残念ながら、Dear Evan Hansenに負けてしまいましたが、正直、どちらも観た私にとっては、僅差でCOME FROM AWAYかもなという位、素晴らしかったです。

2001年9月11日のアメリカ同時多発テロの際に起きた実話を基に描かれた作品なのですが、まずは簡単なあらすじを。

9.11にニューヨークに着陸予定だった38機の飛行機が、急遽、カナダのガンダー空港に緊急着陸しました。国や宗教、赤ちゃんから老人まで、それぞれ違う背景をもった6,600人の乗客を、人口9,000人の小さな街の市民が総出になって彼らの生活をサポートします。宿泊場所はもちろん、電話を貸したり、車を出す、おむつを用意する、コーシャミール(宗教食)を提供する、NYCで消防士をする息子と連絡がとれず落ち込む女性に寄り添う、など、乗客がアメリカに向けて出発できるまでの5日間に起こった様々な物語を描きます。

おすすめポイントは以下の3つ。

1. 演出が面白い
とにもかくにも、演出が素晴らしい。
主役を置かないアンサンブルミュージカルなのですが、舞台転換や衣装替えなどもなく、スカーフやマイクなど役者がポケットに入れられるようなちょっとした小道具、顔の表情、演技などで、100人を超える登場人物を、12人の役者が演じ分けており、新しいミュージカルの形が生まれた作品と言っても過言ではないと思います。これは後述しますが、COME FROM AWAYの根本でもある「国も宗教も関係なく支え合った事実を淡々と伝える」という事をより強調させる演出だと思います。
 
少し中だるみしそうな、アンサンブルミュージカルの形をとりながらも、ストーリー展開のテンポも良く、「幕間なし/1時間40分の1本勝負」というハリウッド映画のような手法をとっているところも面白いです。

2. 私のアメリカの一番好きなところが詰まっている
「アメリカっぽい」がまず一番の感想でした。
9・11テロって、遠い日本に住む私にとっても衝撃的な事件だったわけで、日本人の私には理解が及ばないレベルで国民みんなが傷ついてると思うんですよね。
それをこの数年でミュージカルにして提供してしまうその環境とか国民感覚が素晴らしいな、と。
もし日本だったら、まだアンタッチャブルな空気が流れてる期間ではないかな、と。
色々配慮をした結果、惨劇として描いてしまいそうなこの題材を、前向きな気持ちで終わらせています。

文化や宗教が違うことで人が人を傷つけているその同じ時間に、違う場所で、文化や宗教を超えて人を癒している人たちがいた、そのことを淡々と事実として紡ぐことで大きなメッセージを生んでいる素晴らしい作品だと思います。

3. 主役がないことで伝わることがある
やはり主役がない、というのは観客の入り込みが薄くなってしまいがちです。
ただ前述の通り、文化や宗教を超えて、全て人間は人間であるというメッセージを理解するには誰かの目線で伝えてはダメなんだろうなと感じました。

平和が当たり前ではなくなったこの時代に「他者を理解し、受け入れることの大切さ」を思い出させてくれる、そんな作品でした。

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毎年のトニー賞の楽しみといえば、その年、話題になった作品の生パフォーマンス!
   
舞台装置だけで1作品あたり1000万円かかるとも言われています。
それを毎年約10作品上演するのですから、豪華ですね。
  
客席側にドレスアップして座っている候補者が、パフォーマーとしてもステージに立つので、出演者は忙しそうですが、視聴者としては受賞発表と同じくらい楽しみな時間です。
  
2017年は以下の9作品が演じられました。(英タイトルアルファベット順)

バンドスタンド(BAND STAND)
ベスト振付賞を受賞したバンドスタンド。退役軍人がスイングバンドを組むという設定のお話で、出演者自身が楽器を演奏し、歌にダンスに、と非常に華やかな作品です。リチャード・オベラッカー(ラスベガスで上演されているシルク・ドゥ・ソレイユの「KA(カー)」のミュージカル・ディレクター)が全ての楽曲を書き下ろしたことでも話題となりました。
 
BANDSTAND (Broadway) - "Nobody" [LIVE @ GMA]


カム・フロム・アウェイ(Come From Away)
9.11、NYに着陸予定だった38機の飛行機が、急遽カナダにある小さな街に緊急着陸した際の実話をもとにした作品。100人を超える役数を、舞台演出や衣装替えなどもなく、12人の役者が演じ分け、主役を置かず、アンサンブルミュージカルの新しい形としても話題になり、ベスト演劇演出賞を受賞しました。(詳細はこちら)トニー賞では、代表的な「WELCOME TO THE ROCK」を上演。

Come From Away: "Welcome to the Rock"


ディア・エヴァン・ハンセン(Dear Evan Hansen)
ベストミュージカル賞を含めた6部門で受賞した本作品。
トニー賞でのパフォーマンスは、当然のことながら、主演のベン・プラットが歌い上げる「Waving Through a Window」を上演しました。この作品については好きすぎて、いろいろ記事を書いているので、こちらにまとめておきました!

Dear Evan Hansen: "Waving Through a Window"


ファルセットス(Falsettos)
1992年にブロードウェイで初演されたリバイバル作品。2017年はリバイバル作品賞を含め、5部門でノミネートされました。
1970年代、まだLGBTやエイズというものが認識されていなかった頃、ゲイに目覚めた父親が彼氏と駆け落ち。母親は相談していた精神科医と再婚、近所にはレズビアンカップルが住んでいるという異色な環境の中で成長する少年が主人公。父親の彼氏にも少し慣れてなつき始めた矢先に、彼がエイズにかかっていることがわかります。様々な愛の形を目で見て、心で感じながら、多様性を受け入れていく少年のお話です。トニー賞では2幕のはじまりの曲「A DAY IN FALSETTOLAND」が上演されました。

a day in falsettoland tony awards but it's my fav parts


恋はデジャ・ヴ(Groundhog Day)
1993年に公開された人気映画の舞台ミュージカル版で、7部門でノミネートされました。
傲慢なお天気キャスターが何度夜を超えても同じ日に戻ってしまうという物語。
どうせ過去に戻って悪さを帳消しに出来るし、未来を知っている彼は、様々な悪事をはたらいたり、上手に女性を口説きますが、気になっている女性プロデューサーRitaとの仲だけはどうしてもうまくいきません。何度も過去に帰るうちに、死ぬことすら許されない恐怖に怯える彼がとった行動とは?!
実際にブロードウェイまで足を運んで観てきましたが、
Dear Evan Hansenベン・プラットと最後まで主演男優賞を争ったアンディ・カールが、歌が異常にうまく、かつ「お調子者のモテ男」を絶妙に演じていて、楽しい作品でした。ミュージカルの王道をいくファンタジックコメディです。トニー賞では「Seeing You」を上演してくれました。

Show Clips: GROUNDHOG DAY starring Andy Karl


ハロー・ドーリー!(Hello,Dolly!)
今回で4度目のリバイバルとなりました。仲人業を営むドーリーが、仕事にかこつけて自分を売り込んで再婚を目論むミュージカルコメディで、往年の大スター、ベット・ミドラーがブロードウェイ・ミュージカル初主演で、ミュージカル主演女優賞を受賞したことでも話題に。(詳しくはこちら
ブロードウェイ作品としては非常に珍しく、メディア向けの素材として提供された舞台宣伝写真は1枚だけという強気なプロモーション。それにも関わらず、チケットは連日ソールドアウトの大盛況。最前列の価格がなんと$750まであがりました。
動画の制限が非常に厳格なので、ベット・ミドラーのものは見当たらず、過去のもののハイライトを引っ張ってきました。

Hello Dolly! (show highlights)


ミス・サイゴン(Miss Saigon)
ベストリバイバルミュージカル賞と主演女優賞でノミネートされたミス・サイゴン。
ベトナム戦争のあと、帰国してしまったアメリカ兵の子を出産したキム。米兵の彼がいつか迎えに来てくれると信じて待つ彼女のもとに、元婚約者であるベトナム軍人が訪れ、息子を殺そうとするところを止めようとして殺してしまうシーンで歌われる「THIS IS THE HOUR」と「I'D GIVE MY LIFE FOR YOU」を上演しました。
若干21歳でブロードウェイに新星のごとく現れた女優エヴァ・ノブルザダが、命をかけて息子を守る母親の執念と決意を力強く演じていました。
 
Miss Saigon  - "I'd Give My Life For You"


グレート・コメット(Natasha, Pierre & The Great Comet of 1812)
2017年、最多となる12部門にノミネートされた作品です。
レフ・トルストイによる大河歴史小説「戦争と平和」をポップオペラミュージカルに仕立てた作品。
ステージが劇場全体の中心にあり、会場全体を演出に使った、今流行のイマーシブプレゼンテーション(観客巻き込み型コンテンツ)となっており、この作品のために劇場を改築して臨んだことでも話題です。
主演は歌手のジョシュ・グローバンがつとめ、歌唱力だけでなく、演技力でも評価されました。
(実はジョシュ・グローバンは歌手になる前、高校生時代に屋根の裏のヴァイオリン弾きでミュージカル主演をつとめているので、演技もできるのです)
トニー賞のパフォーマンスはメドレーを上演しました。

The Great Comet - 2017 Broadway Trailer


Josh Groban in Fiddler On The Roof

ウォー・ペイント(War Paint)
世界中の女性を魅了する化粧品ブランド「ヘレナ・ルビンスタイン(Helena Rubinstein)」と「エリザベス・アーデン(Elizabeth Arden)」を創設した二人の女性の物語。二人は熾烈なマーケティング戦略を打ち続けるライバルである一方、あまり裕福でない生い立ちで、まだまだビジネスの世界に女性が少ない時代に女性であるがゆえの世間からのバッシングを受けるという共通点をもちます。多くを犠牲にして事業を成功させていく二人の人生を丁寧に描く作品です。裏方はTeam Grey Gardens(
作曲: Scott Frankel, 作詞: Michael Korie, 脚本: Doug Wright and 演出: Michael Grief )と盤石な体制で、ヘレナを演じるパティ・ルポーンとエリザベスを演じるクリスティン・エバーソールがともにミュージカル主演女優賞でノミネートされました。二人ともトニー賞を2回受賞している大女優で、この二人のデュエットとソロが、目白押しという豪華な演出も話題になりました。トニー賞では「Face to Face」という曲目を上演しました。

Show Clips - WAR PAINT, Starring Patti LuPone and Christine Ebersole



最後に
いかがでしたか?ブロードウェイに行って、観てみたい作品に出会えましたか?
1年に1度のブロードウェイのお祭りでもあり、アカデミーやグラミーよりも、人種や性別に関係なくチャンスのある権威ある賞と言われているトニー賞。
ぜひ一度、NYCに足を運ぶ価値、ありますよ!

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