ソワレを待ちわびて

金曜日の夜、いつもより少しだけドレスアップして舞台を観に行く何とも言えないワクワクが大好きです。時々トニー賞作品を観劇にブロードウェイに行くので、現地のレポートもします。ミュージカル、歌舞伎、舞台を中心につれづれと。

2017年11月

私がミュージカルについて熱く語っていると、
友人に「そもそもトニー賞って何?」と聞かれることがあります。
 
演劇界のトップアワード、「トニー賞」を説明するにあたって、
そもそもEGOTについて説明したほうが分かりやすいので、
こちらにまとめておきます。
 
EGOTとは、アメリカのショウビズ4大アワードの総称です。
 
Eはエミー賞、Gはグラミー賞、Oはオスカー(アカデミー賞)、Tがトニー賞ですね。
オードリー・ヘップバーン、ウーピー・ゴールドバーグなど、
全ての賞を受賞したことがある人を「EGOT」と呼ぶ時もあります。

エルトン・ジョンは残すところエミー賞を、
シンディ・ローパーはアカデミー賞をとれば、EGOT達成となります。
 
E(エミー賞)
エミー賞はざっくりいうと、テレビ番組に贈られる賞です。
対象部門の分類方法は様々で、
・放送時間による分類(プライムタイム、デイタイムなど)
・コンテンツ種別による分類(ドラマ、スポーツ、ニュース、ドキュメンタリーなど)
・その他、制作技術や放送機器・技術など
上記のような分類で各賞が贈られます。

トロフィーはこんな感じ。
EmmyAwardsTrophy

このトロフィーの女性像はエミーと呼ばれています。
元々、エミー賞はテレビ業界のエンジニアたちが
ブラウン管のことを「IMMY」と呼んでいたのが語源で、
このトロフィーに置かれた女性像もいつしか「エミー」と呼ばれるようになりました。
 
G(グラミー賞)
グラミー賞は楽曲クリエイターに贈られる賞です。
この賞は比較的日本でも認知されている賞ですね。
毎年趣向をこらした演出が話題になります。

・主要4部門(最優秀レコード賞 / 最優秀アルバム賞 / 最優秀楽曲賞 / 最優秀新人賞)
・音楽ジャンルでの分類(ポップ、トラディショナル、ロック、R&Bなど)
・その他、映像音楽や作詞作曲、製作技術者など
上記のような分類で各賞が贈られます。

トロフィーはこんな感じ。蓄音機の形を模したものです。
GrammyTrophy

O(オスカー/アカデミー賞)
オスカーはアカデミー賞のことです。
この賞が一番日本で認知度が高い賞なのかなと思います。
みなさんご存知の映画界の最高峰アワードで、
トロフィーは「オスカー像」と呼ばれるので、
「オスカー賞」と呼ばれることもあります。

・作品を対象とした賞(作品賞、短編アニメ賞、長編ドキュメンタリー賞など)
・キャストを対象とした賞(主演男優賞、主演女優賞、助演男優賞、助演女優賞など)
・スタッフを対象とした賞(監督賞、美術賞、衣装デザイン賞など)
上記の分類で賞が贈られます。

トロフィーはこんな感じ。
いわずと知れた「オスカーさん」です。
どうしてこの男性像のことをオスカーと呼ぶようになったのかは諸説あります。
OscarTrophy

T(トニー賞)

トニー賞は演劇&ミュージカル作品に贈られる賞です。

基本的に対象期間にブロードウェイで上演されたものが対象ですが、
過去にはD.C.アリーナステージ(1976)、
La Jolla Playhouse(1993)、アトランタのアライアンスシアター(2007年)など、
ブロードウェイ外で上演された作品も受賞しています。

2017年のトニー賞については、こちらにまとめておきました。

日本での認知度はあまり高くないのですが、
アメリカではとても権威ある賞です。

舞台出身の基礎ができていないと、映画もドラマもできないよね?
という考え方が日本より強いかもしれません。

2016年、アカデミー賞の演技部門の候補者(受賞者ではなく!)が全て白人でしたが、
対照的にトニー賞では黒人系、ヒスパニック系、アジア系の俳優が
多くノミネート&受賞するので、比較的フェアな賞であるというイメージが強くなりました。

・作品を対象とした賞(演劇作品賞、ミュージカル作品賞、リバイバル作品賞など)
・キャストを対象とした賞(演劇主演男優賞、演劇主演女優賞など)
・スタッフを対象とした賞(脚本賞、オリジナル楽曲賞、振付賞など)
上記の分類で賞が贈られます。

トロフィーはこんな感じ。
中央に配置された円形のメダルには、片面にドラマ・マスクが、
もう片面には第二次世界大戦中にアメリカの各都市で軍人にエンターテインメントを提供し、
今の演劇の原型をつくったアメリカン・シアター・ウィングの
共同設立者であるアントワネット・ペリーのイメージが刻まれています。
彼女のニックネームがトニーだったので、トニー賞という名前になったわけです。
 
TonyTrophy

最後に
いかがでしたか?
数多くある作品の中で、エッセンスだけを知ることができるのがアワードのいいところ。
エンターテイメントは生活に絶対必要なものではありませんが、
だからこそ、人生に彩りを添えてくれるものでもあります。
みなさんが素敵な作品に出会えますように。
 
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遅ればせながら、2017年トニー賞の総括をまとめました。
トニー賞概要についてはこちらの記事をご参照ください。
 
演劇とミュージカルを対象に24部門の頂点を決定するトニー賞。
2017年は、2016年4月29日〜2017年4月27日に上演された作品が対象です。
約850人の演劇関係者の投票によって決定した受賞者は下部にまとめておきました。
 
2016年はハミルトン一強という感じでしたが、
2017年(特に作品賞!)は、どのメディアの予想も割れる混戦模様で、
素晴らしい作品が多く生まれた豊作の年でした!
 
印象的だったのは、Dear Evan Hansenの楽曲を作ったPasek&Paulがオリジナル楽曲賞を受賞したこと。
既にLA LA LANDでオスカーを受賞している二人は今年だけで2アワードを制覇したことになります。
業界をまたいで、才能を発揮してくれました。
 
そう考えると、ミュージカル映画の金字塔「サウンド・オブ・ミュージック」もブロードウェイでうまれ、1960年トニー賞で5部門受賞し、その後1965年に映画化されたものだし、「レ・ミゼラブル」も1987年にトニー賞8部門受賞し、映画化されて広く知られる作品ですよね。
 
2017年ノミネート作品の特徴としてはシリアスな事象を切り取った社会派作品が多かった印象です。
The Book of Mormonのような笑いに走りきった作品でもなく、
2016年のハミルトン旋風のような音楽ありきな作品でもない。
ただ現代を生きる一般市民を描き、そして、明日自分はどう生きていくか?
と問われているようなそんな作品が多かったです。

第41回トニー賞2017年 受賞作品および受賞者(主要部門のみ抜粋)
【ミュージカル部門】
ミュージカル作品賞:『Dear Evan Hansen
ミュージカル・リバイバル作品賞:『Hello, Dolly!
ミュージカル主演男優賞:ベン・プラット(『Dear Evan Hansen』)
ミュージカル主演女優賞:ベット・ミドラー(『Hello, Dolly!』)
ミュージカル助演男優賞:ギャヴィン・クリール(『Hello, Dolly!』)
ミュージカル助演女優賞:レイチェル・ベイ・ジョーンズ(『Dear Evan Hansen』)
ミュージカル演出賞:クリストファー・アシュリー(『Come From Away』)
ミュージカル脚本賞:スティーヴン・レヴェンソン(『Dear Evan Hansen』)
ミュージカル装置デザイン賞:ミミ・リエン(『Natasha, Pierre&The Great Comet of 1812』)
ミュージカル衣装デザイン賞:サント・ロカスト(『Hello, Dolly!』)
ミュージカル照明デザイン賞:ブラッドリー・キング(『Natasha, Pierre&The Great Comet of 1812』)
 
【演劇部門】
演劇作品賞:『Oslo』
演劇リバイバル作品賞:『Jitney』
演劇主演男優賞:ケヴィン・クライン(『Present Laughter』)
演劇主演女優賞:ローリー・メトカーフ(『人形の家 パート2』)
演劇助演男優賞:マイケル・アロノフ(『Oslo』)
演劇助演女優賞:シンシア・ニクソン(『子狐たち』)
演劇演出賞:レベッカ・タイシュマン(『Indecent』)
演劇装置デザイン賞:ナイジェル・フック(『The Play That Goes Wrong』)
演劇衣装デザイン賞:ジェーン・グリーンウッド(『子狐たち』)
演劇照明デザイン賞:クリストファー・エイカーリンド(『Indecent』)
 
【ミュージカル・演劇 共通部門】
振付賞:アンディ・ブランケンビューラー(『Band Stand』)
編曲賞:アレックス・ラカモア(『Dear Evan Hansen』)
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2017年、日本にも上陸したビリーエリオット。
 
詳細な感想はこちらをご参照いただきつつ、この作品の肝となるのは巨匠エルトン・ジョンが書き下ろした楽曲たち。

その中でも人気の「Expressing Yourself」を私なりに和訳してみました。

主役のビリーが親に反対されたバレエを続けるか悩む中、親友のマイケルに相談にいくシーン。
 
「男がバレエするなんて、おかしい奴だと思われるよ?!」と女装したままアドバイスしたり、「え?バレエってことはチュチュが着れるの?!」「あれは女性だけだよ」「なんだつまんない」といったコミカルなシーンが印象的。
 
ビリーとは対照的に誰の目も気にせず女装を楽しむマイケルが歌い上げるこの「Expressing Yourself」は「個性を大切に!自分に嘘をつかない!」という、このミュージカル全体の核心となるメッセージソングとなっています。
 
エルトンジョンには作曲中にこの舞台の彩りも思い描いてただろうな、とまで思ってしまう、エルトンワールド全開!の一曲です。
 



〜 Expressing Yourself(和訳)〜

Is it sinful if you're blue to cheer up the place?
What is wrong with dressing up in satin and lace?
心が曇ったとき、サテンやレースで着飾ることで気持ちを明るくさせることの何がだめなの?

Get some earrings, some mascara, heels and a fan.
Pretty soon you will start to feel a different man.
イヤリングやマスカラ、ハイヒールに扇子を身につけて、新しい自分に出会おう。

What the hell's wrong with expressing yourself?
Being who you want to be?
自分自身をさらけだすんだ!
君は何者になりたいの?

Will anybody die if you put on a dress?
Who the hell cares if your blusher's a mess?
男がドレス着たからって、誰か死ぬの?
チークをつけたからって、誰かに迷惑かけるの?

Start a new fashion, buck all the trends.
Emphasise integrity.
男だっておしゃれを楽しんだっていいじゃない!新しいファッション楽しもう!
もっと自分をさらけ出せ!

Cos what the hell is wrong with expressing yourself
For wanting to be me?
自分自身になることの何が悪いの?

What the hell's wrong with wearing a dress?
Being who you wanna be?
ドレスを着るのが何が悪い!
なりたい自分になろう!

Who the hell is it you try to impress
All you have to do is learn to care less
Start a new fashion, buck all the trends
押し付けなんてやめてくれ!
気にせず君がしたいようにするだけさ!
新しい服身につけて!

Billy, sing something to me
ビリー、歌いあおう!

What the hell is wrong with expressing yourself?
For trying to be free.
もっと自分をさらけ出そう!自由を謳歌しよう!

If you wanna be a dancer, dance
If you wanna be a miner, mine
If you want to dress like somebody else,
Fine, fine, fine.
ダンサーになりなきゃ、踊るだけさ!
炭鉱夫になりたきゃ、掘るだけさ!
あの人みたいに着飾りたければ、着飾ればいい!
何の問題もありゃしないよ!

It's not a big statement, it's not a weird act
Just a good idea at the time
大したことない!おかしくなんかないさ!

We'll not complain about your boring life
If you'll just leave me to mine.
理解してもらえなくたって、いちいち説明なんてする必要ない!

If you wanna be a dancer, dance
If you wanna be a miner, mine
ダンサーになりなきゃ、踊るだけさ!
炭鉱夫になりたきゃ、掘るだけさ!

Everyone is different
It's the natural state
It's the facts, it's plain to see,
みんなそれぞれ違う価値観だよ!そんなの当然だと思わない?

The world's grey enough without making it worse
What we need is individuality.
この世界を輝かせるもの!
僕たちが一番必要なもの!それは"個性"!
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子役育成型オーディションでも話題のミュージカル、「ビリー・エリオット」を観てきました。一度目は旦那と。二度目は感動の投稿をFacebookに投稿したところ、食いついてきた友人数人で。
 
カーテンコールはもちろん、劇中も、手がちぎれるくらい拍手しました。
これは子役の少年少女たちへのオーバーリアクションによる賛辞ではなく、心から感動してしまった私がどれだけ拍手をしても、し足り無かったというくらい、心動かされたからです。
 
既に公演が終了してしまったのですが、見逃した方はこちらでロンドン公演の日本語字幕版が楽しめますので、ぜひ!!私は自宅でこれを観ながら、また涙。
Billy Elliot: The Musical Live on iTunes
BillyElliotDVD

この作品は、映画「リトルダンサー」を原作に、大御大エルトン・ジョンが書き下ろした曲によってミュージカル化されたものです。原作である映画はスティーブン・ダルドリー(ブロードウェイなどの舞台作品やテレビドラマの製作および演出を手がけた大御所)による、初の長編映画作品だったこともあり、既に舞台っぽい演出が多く施された作品でした。
 
まずは簡単なあらすじを
1984年から1985年にかけてサッチャー政権が打ち出した「炭鉱閉鎖政策」に対抗した大規模なストライキが起こったイギリス北部の炭鉱街が舞台。ストの中心人物である父&兄のもとで育つ11歳のビリー少年は、街の男達の従来の慣習に従ってボクシングを習っています。(ただあまり乗り気ではありません。)

ある日、ボクシングの稽古に遅刻したビリーは居残り、そのまま、ボクシングの後に実施されるバレエのレッスンに参加することになるのですが、そこでバレエに魅了されてしまいます。幼いうちに母親を亡くしたビリーにとって、バレエのウィルキンソン先生は母親の温かさも感じられる自分の唯一の理解者となっていきます。

ビリーの才能を認めてくれた先生はロイヤルバレエスクールの受験をすすめるものの、昔気質の男らしさ(このご時世男らしさってなんだろうという話なのですが)を大事とする父と兄は、バレエは女々しく、浮わついた人間のやるものであり、ストライキでみんなが戦っている時に何をバカなことを!と猛反対します。

バレエを続けたいビリーは隠れてウィルキンソン先生のレッスンを受け続け、その様子を知ったビリーの父は彼の才能と情熱を理解するのですが、長期間に渡るストライキのせいでバレエスクールの試験を受けに行く交通費すら出せません。ストライキ仲間からの期待や男のプライドも捨てて、父親はスト活動から離脱しようとします。ストライキの中心にいた親子の父親が裏切るわけですから、お兄ちゃんは激怒。そんな事情を知った仲間達の寄付によりビリーは試験を受けに行くことができます。そして暗い話しかない街の唯一の光になっていくわけですが、、、

さてビリーはスクールに受かるのか?そしてバレエダンサーになれるのか?
 
おすすめポイントは以下の4つ
  
1. 主役ビリーにかかり過ぎている重圧をはねのける子役の少年に感涙
この公演を実施するにあたり、大きな課題となるのが、子役の育成です。
主役のビリーはタップダンス、クラシックバレエ、アクロバット、そして歌唱、と多岐に渡る技術が求められるだけでなく、2時間半の公演で、ほぼ出ずっぱりなので、狂気的な体力とやりきり力が求められます。

バレエを続けられない怒りともどかしさを爆発させる「アングリー・ダンス」では4分弱の間、激しいタップを踊り続けますし、「エレクトリシティ」では2分半もの独唱のあと、そのまま3分以上のクラシックバレエのシーンに突入します。大きなステージにぽつんと一人のダンスで時間をもたせるシーンがひたすら続くという。体の小さい子役が舞台の大きさを感じないくらい、手足をしっかり伸ばしてそれをやり切っていることに息をする暇もありません。

最後は「子役」と呼んでしまうのも申し訳ない気持ちになるくらいのプロフェッショナルぶりに圧倒されます。

Electricity - Billy Elliot The Musical

 
2. ビリーの親友「マイケル」に注目
主演ビリーの大変さを「多岐にわたるダンス&歌唱技術×体力」だとすると、サブキャラでもある親友マイケルの子役のポイントは「生まれ持ってのキャラ」もしくは「憑依力」なのではないかなと。
 
マイケルは実は女装癖があります。大人達に反対されながらも、バレエを続けたい想いをビリーがマイケルに相談するシーンでは「え?男がバレエするなんておかしいと思われちゃうよ?!」と、女装をしながら答えるシーンは非常にコミカル。その後に続くマイケルが歌う「Expressing Yourself」(これがまた名曲中の名曲!)は「個性を大切に!自分に嘘をつかない!」という、このミュージカル全体の核心となるメッセージソング(和訳はこちら)であり、それを主演のビリーでなく、マイケルが歌うのです。この作品においてマイケルというのはただの脇役ではなく、かなり大事なキャラクターになります。「バレエを止められて悩むビリー」と対照的に「堂々と女装を楽しんでいるマイケル」。このマイケルは根アカで、なのに、どこか悟ったような、大きな問題を自分自身で消化しようとしている凄みが必要で、それは演技ではなく、生まれ持ったキャラクターでしか演じきれない難しい役どころなのです。ここに是非注目してほしいです。
「Expressing Yourself」を歌いきった後に、マイケルが暗転させるタイミングが私は大好き。

EXPRESSING YOURSELF - BILLY ELLIOT LIVE Elliott 


3. 演出
2017年の日本版「ビリー・エリオット」では「北九州弁」を話しており、これは、なるほど!と膝を打つ演出でした。炭鉱夫が多く住んだエリアで、方言が強い場所ですよね。実際に本場ロンドン公演の「ビリー・エリオット」でも、舞台となった北の訛りが強くて、蛮カラなセリフ回しの演出が特徴的です。
 
あと印象的な演出は「Solidarity」で、「警官vs炭鉱夫のストメンバーが争う様子」と「バレエの練習をする少女たち」を対照的に描いてるシーン。それは「戦争と平和」であり、「過去と未来」でもあります。

Solidarity (Billy Elliot)


4. ホリプロの(堀義貴社長の)執念がすごい
「リトルダンサー」がエルトン・ジョンの楽曲によってミュージカル化されるらしいぞ、という情報を聞きつけたホリプロの堀義貴社長(当時は社長ではなかったですが)が、「日本で絶対やりたい!」と名乗りをあげるのですが、そもそもロンドンでのミュージカル公演が開始されていないタイミングで挙手しているのが面白いポイントです(笑)。「まだ本場の公演も始まってないのに、日本での展開なんて考えてないよ」と当時は一蹴されるわけですが、「もしやるってなったら、絶対声かけてよ?!絶対交渉させてよ?!」と堀社長は強く連絡をしたそうです。実際のロンドン公演が開幕し、堀社長は現地に飛びます。観た感想は「やばい、無理だ、できない。。。」だったそうです。「俺たちがやってきたのは制作者ごっこだ!こんなスゴいことできない!どこであんな子どもを探せばいいんだ!無理無理!」と、怒りがこみ上げてきて、全てのやる気をなくした、というくらいの衝撃だったそうです。

その後、様々な日本の劇団が名乗りをあげ、ホリプロは候補から外れるところまでいくのですが、その時「これはホリプロという会社が乗り越えるべき壁である」と奮起し、結果、勝ちとります。上演まで漕ぎ付けるその漢気は、ビリーの夢を最後は理解し、応援し、覚悟を決めて新しい時代を引導するビリーのお父さんの姿と重なる部分もあり、とても勇気付けられます。
 
最後に
私の母は教員なのですが、どうしても観て欲しくて、無理やり観に行かせたら、結果、教員仲間を連れて、その後何度も観に行ったようです。それは「子どもの頑張ってる姿に心打たれる作品だから」ではありません。
 
ビリー・エリオットという作品は、いわば「神視点」で観ることができる作品です。
私たちは未来にいるからこそ、サッチャーによる「労働組合の社会主義が、企業家精神を破壊する」という考察に基づいた、「赤字の炭鉱閉鎖」という政策に一定の理解ができますが、時代背景を考えると当時、その強引さはただの悪であり、もちろん「バレエを踊る男性」への理解度も低い。作品中はレガシーの象徴として描かれているビリーの父、兄が、当時、そのエリアにおいては「常識人」だったはずです。
 
翻って、今現代において、10年後、20年後を読むのは当時よりも困難な環境の中で、「〜べき」「〜らしさ」「常識とは」「正しい教養」というものを、どうやって定義して教えることができるだろうか。とふと思ってしまうのです。それよりも「好きなものに没頭できる力」、「夢中力」を養うことがどれだけ尊く、子どもたちの未来を切り拓いてくれるものかを感じさせてくれる。
 
そんな悩める大人たちに是非観ていただきたい作品です。
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COME FROM AWAYを見てきました!それも9月12日に(笑)
COMEFROMAWAY

2017年トニー賞作品賞の有力候補の一つだったこの作品。
Dear Evan HansenとGroundhog Day、そしてこのCome From Awayの3つは絶対観るって決めてました。

ちょっと話は逸れますが、2017年のトニー賞は本当に面白かったですね。
昨年2016年は発表前から「ハミルトン/Hamilton」一強でしょ、って空気がムンムンでしたが、今年は発表まで分からない、それだけ豊作だった。という嬉しい悲鳴です。

残念ながら、Dear Evan Hansenに負けてしまいましたが、正直、どちらも観た私にとっては、僅差でCOME FROM AWAYかもなという位、素晴らしかったです。

2001年9月11日のアメリカ同時多発テロの際に起きた実話を基に描かれた作品なのですが、まずは簡単なあらすじを。

9.11にニューヨークに着陸予定だった38機の飛行機が、急遽、カナダのガンダー空港に緊急着陸しました。国や宗教、赤ちゃんから老人まで、それぞれ違う背景をもった6,600人の乗客を、人口9,000人の小さな街の市民が総出になって彼らの生活をサポートします。宿泊場所はもちろん、電話を貸したり、車を出す、おむつを用意する、コーシャミール(宗教食)を提供する、NYCで消防士をする息子と連絡がとれず落ち込む女性に寄り添う、など、乗客がアメリカに向けて出発できるまでの5日間に起こった様々な物語を描きます。

おすすめポイントは以下の3つ。

1. 演出が面白い
とにもかくにも、演出が素晴らしい。
主役を置かないアンサンブルミュージカルなのですが、舞台転換や衣装替えなどもなく、スカーフやマイクなど役者がポケットに入れられるようなちょっとした小道具、顔の表情、演技などで、100人を超える登場人物を、12人の役者が演じ分けており、新しいミュージカルの形が生まれた作品と言っても過言ではないと思います。これは後述しますが、COME FROM AWAYの根本でもある「国も宗教も関係なく支え合った事実を淡々と伝える」という事をより強調させる演出だと思います。
 
少し中だるみしそうな、アンサンブルミュージカルの形をとりながらも、ストーリー展開のテンポも良く、「幕間なし/1時間40分の1本勝負」というハリウッド映画のような手法をとっているところも面白いです。

2. 私のアメリカの一番好きなところが詰まっている
「アメリカっぽい」がまず一番の感想でした。
9・11テロって、遠い日本に住む私にとっても衝撃的な事件だったわけで、日本人の私には理解が及ばないレベルで国民みんなが傷ついてると思うんですよね。
それをこの数年でミュージカルにして提供してしまうその環境とか国民感覚が素晴らしいな、と。
もし日本だったら、まだアンタッチャブルな空気が流れてる期間ではないかな、と。
色々配慮をした結果、惨劇として描いてしまいそうなこの題材を、前向きな気持ちで終わらせています。

文化や宗教が違うことで人が人を傷つけているその同じ時間に、違う場所で、文化や宗教を超えて人を癒している人たちがいた、そのことを淡々と事実として紡ぐことで大きなメッセージを生んでいる素晴らしい作品だと思います。

3. 主役がないことで伝わることがある
やはり主役がない、というのは観客の入り込みが薄くなってしまいがちです。
ただ前述の通り、文化や宗教を超えて、全て人間は人間であるというメッセージを理解するには誰かの目線で伝えてはダメなんだろうなと感じました。

平和が当たり前ではなくなったこの時代に「他者を理解し、受け入れることの大切さ」を思い出させてくれる、そんな作品でした。

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